二胡の弓はいつ交換するのか
…と書いてきたので、弓の交換についても書きます。
目次
なぜ弓を交換するのか
擦弦楽器である二胡は、バイオリンやチェロと同じように、弓で弦をこすって音を出します。
これをもう少し細かく見ていくと、
弓の毛そのものが弦をこすっているのではなく、
毛につけた松脂が弦との摩擦を生じて、音のエネルギーをつくっています。
音を出すために、演奏前に、弓の毛に松脂を塗りつけます。
その際、松脂は、弓毛表面上の細かい突起・キューティクルによって削られて細かい粒子となって弓毛上に付着していききます。
弓を使っていくと、このキューティクルがなくなっていって、松脂が弓毛につかなくなっていきます。
こうなった状態が、弓毛の寿命、ということになります。
毛が切れるのだが…
よく、「使っていて弓毛が切れる。かなり減ってきたのではないか?交換が必要か?」
と聞かれます。
二胡を演奏していて、弓毛はよく切れます。
切れた弓毛は、できるだけ根本から切り取ります。
でも、普通に使っている弓なら、毛が切れることが、弓の理由にはなりにくいです。
弓の交換を考える際には、純粋に毛のキューティクル具合で考えます。
とはいえ、あまりに頻繁に毛が切れる場合は、別の理由を考えましょう。
・いつも同じような長さの位置で切れる場合、演奏の癖で、強い力を入れてしまう部分がないか確認。
・二胡の部品に尖っている部分がないか、扱う際によく引っ掛けてしまっていないかを確認。
・長期間使っていない弓毛は、再び演奏するとバラバラと毛が大量に切れることがあります。これは、切れるのがおさまるまで弾きこんでいきます。
交換時期はどうやって見定める?
毛のキューティクルの状態は目では見えません。
ある日音が突然でなくなるようなものでもないので、弓の交換時期というのはわかりにくいです。
新しい弓には、キューティクルがたくさんあるので、松脂をたっぷり毛につけておくことができます。
使い古した弓には、あまり松脂が付かない。
松脂の量で、弾いたときの手ごたえが変わってきます。
私の場合は、ある程度弓を使ったら、新品の弓を用意して、古い弓と順に弾き比べます。
同じように松脂を塗った新旧の弓の弾きごたえに大きな差があったら、交換します。
毛替え?弓替え?
バイオリンなどの場合、弓自体が大変高価なので、毛のみを交換する「毛替え」という作業を工房などで行ってもらうようです。
二胡の場合は、弓を丸ごと交換します。
理由は弓自体がとても安かったから、ということだったのですが、
最近は品質の向上とともに二胡弓の価格も上がってきました。
日本でも二胡弓の毛替えをしてくれるお店もみられてきました。
弓が変わると、演奏感は変わります。
それは仕方のないことだと思っています。
「今使っている弓を使い続けたい」という気持ちはわかりますが、
そもそも楽器は状態が変わっていくもので、同じ状態をキープできることが自然だとは思いません。
毛替えをした場合であっても、毛替え職人さんの色が混入します。
まったく同じ状態のままかえってくることはないのです。
「新しい弓はこんな感じか。これからよろしくね!」
新しい状態との出会いを楽しんでいく心構えを持っていた方が音楽生活を楽しめるように思います。
…とはいえ、毛替えをした方が安く済むなら、依頼してみたいのが本音です…
もはや気分転換
…と、いろいろ書いてきましたが、実のところ私は、
部品交換は気分転換
と割り切っています。
弦も千斤も弓も、くたびれても使うことはできちゃいます。
新品購入費用もばかになりません。
が、楽しく演奏できる”気分”を維持するため、
コンサートへの気合を入れるために、
物理的な交換時期はあまり気にせず、
ここぞというときに交換するようになりました。
部品を変えれば気分も変わります。
部品交換することで楽器の状態が変わるため、
頻繁に交換して、感触を確かめることは、楽器を理解していくことにもつながりますので、
自分の中できめたルールで交換して、楽器の変化に気づこうとしていくことが
より楽器と仲良くなれるコミュニケーションの一つではないでしょうか。
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